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放課後の部活の練習中。
ふと入り口に目をやると、そこに一人の女の子が佇んでいるのを見つけた。
―梨沙子だ―
二つ年下の梨沙子は今年入学したての新入生。
家が近所で昔から家族ぐるみでの付き合いがある。
現在も何かと忙しく家を空けることの多い僕の両親に代わって、梨沙子のお母さんが世話をしに来てくれたりする。
休憩がてら汗を拭きつつ、梨沙子の元へ歩み寄る。
「よぅ、どうしたんだ?」
「うん、一緒に帰ろうと思って。」
「あれ?『もう中学生なんだからおにぃちゃんとは一緒に帰らない』って言ってなかったっけ?」
梨沙子は慌てた様子で話す。
「ほ、ほら。たまには一緒に帰るのもいいかなーとか思って・・・」
しかし僕には本当の理由が分かっていた。
「たしか今日って、おじさんとおばさんは旅行に行ってるんだったよな」
「・・・うっ」
「なぁーんだ、早く帰っても誰も居ないもんだから寂しくて待ってたのか」
梨沙子は頬を膨らませ怒ったように言う。
「ち、ちがうもんっ!たまには一緒に帰ってあげないと、おにぃちゃんだって寂しいと思ったからだもん!」
「はいはい。そういうことにしておいてやるよ」
「もうっ、おにぃちゃんのいじわる・・・」
まだ頬は膨らんでいたが、笑いながら梨沙子が言った。
「それじゃあ着替えてくるから、もうちょっと待ってな」
「うん」
久しぶりに梨沙子と沢山話してる気がする。
すっかり暗くなった帰り道、他愛も無い話を延々としながら僕は思った。
「ねぇ。おにぃちゃんのパパとママって家に居ないこと多いじゃん?」
急に沈んだ口調で梨沙子が言った。
「ん?何だ?急に」
「うん。一人で夜とか過ごすのって寂しくないのかなーって思って・・・」
「そんなに今日一人なのが怖いのか?明日には帰ってくるんだろ?おじさんとおばさん」
「うん・・・そうだけど・・・」
そんなことを言ってる間に、梨沙子の家の前に着いた。
「まぁ今日のところはさっさと飯食って、パッと寝ちゃうことだな。」
そう言い残して僕はさっさと自分の家に向かい歩き出した。
まぁ梨沙子だってもう中学生なんだし、一晩くらい何でもないだろう。
自宅前に到着し、鞄から鍵を探す。
「えーと・・・どこやったんだろう」
呟きながら鞄をゴソゴソしていると、
―チョンチョン―
何やら服の裾が引っ張られる感じがした。
ん?なんだ?
僕は振り返ってみる。
するとそこにはさっき送り届けてきたはずの梨沙子の姿があった。
「あれ?何してるんだよ?」
「えへへ・・・ついてきちゃった」
照れたように笑いながら梨沙子が言った。
「ねぇ、やっぱり今日、おにぃちゃんの家にお泊りしてもいい?」
「まったく。しょうがないなぁ・・・」
軽くタメ息をつきながらも梨沙子を家に入れた。
しょうがないと思いながらも、なぜかドキドキしてくる。
胸の高鳴りを不思議に思いつつ僕も家に入っていった。
~続きませんw